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東京大学大学院情報理工学研究科廣瀬・谷川・鳴海研究室で、
VR空間の研究・開発に活用されるバックパック型PC『VR One』

種類: MSI News
最終更新: 17.03.2017

情報理工学研究導入事例『VR One 7RE-002JP』

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東京大学大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻
廣瀬・谷川・鳴海研究室 講師

鳴海拓志

世界初のバックパック型PCとして世界中の注目を集めた「VR One」。2017年1月には第7世代インテル® Core i7 プロセッサーを搭載した後継モデルも登場し、VR専用バックパック型PCとしてその完成度を着実に高めている。現在、VR Oneは個人向けの他、国内外のアミューズメント施設や各種の教育機関・研究機関において、様々なVRコンテンツ・VRデバイスの開発や運用に活用されている。そこで、東京大学大学院情報理工学研究科で知能機械情報学を専攻する廣瀬・谷川・鳴海研究室の講師である鳴海拓志氏に、VRコンテンツの研究・開発において、研究室ではどのように「VR One」を活用しているのか、使い勝手や性能評価なども含めて話を伺った。

■VR元年と呼ばれた2016年

 VR元年と呼ばれた2016年、多くのヘッドマウントディスプレイ(HMD)が発売されVRが一気に身近なものになった。その中でもHTC Viveの発売によりルームスケールVRを手軽に体験することができるようになったことは特筆すべきであろう。ルームスケールVRではユーザはVR空間を実際に自由に動き回ることができ、圧倒的な没入感が得られる。スマホと映画館のスクリーンとでは映像体験の質が異なるように、椅子に座って体験するVRとVR空間を動き回るルームスケールVRとではVR体験の質は一線を画す。ただルームスケールVRを実際に体験してみると、すぐにコードの煩わしさに気づく。HTC Viveのコードは5m超と十分な長さを持っているが、動き回っているうちにコードが絡んでくる。絡んだコードに脚が引っかかったり、頭がコードで引っ張られることでVRへのプレゼンスが剥がれてしまうだけではなく、転倒などの危険性も高まる。こうしたコードの煩わしさを解消するためにバックパックのように背負えるゲーミングPCがあればいいと前々から思っていた。それを実現したのがMSIが満を持して発売したVR oneである。VR oneは従来のゲーミングPCとは一線を画す。まず本体にはディスプレイやキーボードが存在しない。HMDをディスプレイ、コントローラを入力インタフェースとする、VRに特化した新機軸の製品である。VR oneの本体の重さはバッテリも含めて3.6kgである。実際に背負ってみると幅広のベルトと背中にフィットするフレームのおかげで非常に軽く感じる。HMDを付けてしばらくするとVRの世界に没頭してPCを背負っていることも忘れてしまう。

■「ルームスケールVR」を拡張したVR空間の研究

 弊研究室ではルームスケールVR をさらに拡張し、VR空間で自由な歩行を可能にするための研究を行っている。弊研究室とUnity Technologies Japan合同会社が発表したVRシステム「Unlimited Corridor」では、ユーザは実際には直径5mの円形の壁に沿ってグルグル歩いているにもかかわらず、無限に真っ直ぐ歩き続ける体験ができる。これはリダイレクテッド・ウォーキングという技術と、視触覚間相互作用を組み合わせた新手法、「視触覚リダイレクション」によって、ユーザの空間知覚を強力に操作することで実現されている。リダイレクテッド・ウォーキングとは、HMDに表示する映像に補正を加えることで、実際には曲がって歩いているにもかかわらず、まっすぐ歩いていると感じさせる技術である。従来手法では、直進していると感じるには半径22m以上の円周上を歩く必要があり、広い空間が必要であった。それに対し,現実世界の曲がった壁に触れると同時にVR世界で平面の壁を視覚的に提示することで、平面の壁に触れている感覚を生じさせ、視触覚間相互作用(触覚刺激が同時に受け取る視覚刺激の影響で変化して知覚される現象)を引き起こすと、直進と感じられる円周の大きさを半径5m程度まで縮小可能であることを示せた.この基本原理を応用して、はしご状の構造を持つVR空間を無限に探索できるようにしたのが「Unlimited Corridor」である。

VR Oneの背中に当たる部分
背中にフィットするフレームのおかげで体感はかなり軽く感じる
 
『Unlimited Corridor』円筒形の壁の周りを歩いているにもかかわらず
真っ直ぐ歩いているように感じさせることができ、
無限に歩いて探索できるVR空間を実現できる

■連続稼働時にも安定した運用が可能な「VR One」

 「Unlimited Corridor」はSIGGRAPHやDC EXPOなど様々な場所でデモ展示を行い、好評を得ている。第20回メディア芸術祭ではエンターテインメント部門優秀賞を受賞している。しかし、展示のオペレーションでは、これまでゲーミングノートをバックパックに入れ、それをユーザに背負ってプレイしてもらっていた。しかしこの方法では、排熱がバックパックに溜まってしまい機材の故障に繋がる。他方,VR oneは背部にファンがあり、連続稼動してもGPUの温度が上がることがなく、ファンノイズも気にならないレベルに仕上がっている。さすがは冷却機能に定評のあるMSI社の製品であるといえよう。

Unlimited Corridorで体験者が見る映像
地上200mの工事現場を探索するVRコンテンツとなっている
Unlimited Corridor体験者の様子
VR Oneを使うことで快適に質の高いVR体験を提供できるようになった

 また、最近のゲーミングノートはVR Readyを謳ったものが多いが、バッテリ駆動時には電圧が足りずGPUをフル稼働できないため、どうしてもFPSが下がってしまっうという問題を抱える製品もある。VR oneは独自のバッテリ管理によりNVIDIA® GeForce® GTX 1070を最大限に使いこなし、バッテリ駆動時でもFPSを保ち続けてくれる。これはルームスケールVRにおけるプレゼンスを維持する上で重要なメリットである。

■本体重量とバッテリー性能のバランスに優れる「VR One」

 さらに、従来のゲーミングノートの問題点として、バッテリが1時間程度しか持たない上、充電に倍以上の時間がかかってしまうという点が挙げられる。そのため、丸一日といった連続した体験型デモを提供しようとすると、複数台のゲーミングノートPCを準備してローテーションさせる必要があり、メンテナンスが大変になるという苦悩があった。VR oneはバッテリのホットスワップができるため、デモ展示などで一日中運用する際にも、ダウンタイムを必要とすることがなく連続稼動することができる。また、バッテリの残量が背中側のLEDで確認できることもバッテリ交換のタイミングを簡単に知ることができ非常に使い勝手が良い。他社製品のバックパックPCではバッテリ駆動時間を伸ばすためにバッテリ容量を大きくした結果重くなっているものもあるが、VR oneは装着時の重さとバッテリ性能のバランスが非常によく考えられている。

VR Oneと付属のバッテリー
ホットスワップで交換が可能になっている
VR One専用バッテリーの充電器
アトラクション等での連続稼働でも安心だ

 記憶媒体にはもちろんSSDを使用しているため、VRに没入してジャンプやダッシュといった動作をしても支障がでることはない。また、本体に電源供給ができる端子が備わっている上、HTC Vive用の専用ケーブルも付属しているため、コードを余すことがなく、非常に取り回しがよい。価格も30万円と、VRに特化した製品でありつつも他のハイエンドゲーミングPCと比較してそれほど変わらない価格である点が嬉しい。MSI のバックパックPC「VR one」は、ルームスケールVRの運用を検討している方にとっては第一の選択肢になるだろう。

(鳴海拓志)

製品型番 VR One 7RE-002JP
JAN 4526541186196
OS Windows 10 Pro
搭載CPU インテル® Core i7-7820HK (2.9GHz / Turbo 3.9GHz)
液晶パネル 非搭載
搭載メモリの規格 DDR4-2400 SO-DIMM 32GB(16GB×2) 空きスロットなし(最大実装32GB)
ストレージ 512GB SSD(M.2 NVMe準拠PCIe Gen3)
チップセット インテル CM238
グラフィックス機能 NVIDIA® GeForce® GTX 1070 8GB GDDR5
スピーカー 非搭載
光学ドライブ 非搭載
キーボード仕様 非搭載
ACアダプタ 230W
バッテリ リチウムイオン外付け型 8セル 91Wh×2
外形寸法 幅409×奥行292×厚さ54~60mm(折り畳み時・突起物を除く)
質量(㎏) 3.6Kg(バッテリー有り)/2.4kg(バッテリー無し)
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